社叢林(社寺林)
ヤブツバキクラス域では、古くから人々の居住地や農耕地としての開発が進み、植生も人間活動の影響下で大きく変化してきた。
しかし、神社などの社叢林のなかには長い間伐採を免れてきたところもあり、大昔(約2500年前)の人間活動の影響を受ける前の植生(原植生)の様子を知る手がかりを与えてくれることがあるという(文献6)。
額南浦神社境内(金沢市三十苅)
スギが優占している
(2003年8月4日撮影)
金沢市内の神社171社を対象に社叢林の自然度を調べた報告書(文献40)によると、この地域は、長期にわたって人為的な開発を受けてきたため、自然性の高い社叢林は比較的少ない。
額東神社境内(金沢市額谷)
スギやケヤキが優占している
(2003年8月4日撮影)
調査結果表を見ると、スギやケヤキが優占する社叢林が多いことが読み取れる。
スギやケヤキは建築や家具、彫刻など用途が幅広いので(文献48)、用材として、または防風などの植栽されてきたのであろう。
スダジイが優占する波自加弥神社境内
(2003年7月20日撮影)
それでも、スダジイが優占する花園八幡町の波自加弥(はじかみ)神社やタブノキが多く生育する寺中町の大野湊神社など比較的自然性が高い社叢林があり、かっては低地の海岸沿いにはタブノキ林やスダジイ林、山間部ではウラジロガシ林が発達していたことが推察できるという(文献40)。
波自加弥神社のスダジイ林
(2003年7月20日撮影)
金沢周辺のいくつかの神社の社叢林(特にスダジイが優占する社叢林)を見ていると、例えば気多大社入らずの森や鹿島の森に見られるような倒木や枯損木、林冠のギャップなどは少なく、同じような高さの同径の樹木で形成されていることが多いように思われる。
あくまでも推測だが、こうした社叢林もまた特定の樹種を植栽したり伐り残すなどといった何らかの人為の影響を受けてきたものではないかと思われる。
スギやケヤキが優占する社寺林
金沢市寺町寺院群、本因寺、長久寺裏
(2003年7月20日撮影)
神社だけでなく、寺院の境内にもスギやケヤキなどがまとまった林を形成していることがある。
これらは植栽起源であっても、市街地の緑のオアシスとして重要な役割を担っているといえよう。