「緑の回廊」
 

 金沢市の緑は兼六園や金沢城公園本多の森を中心に構成され、寺町台地・小立野台地を取りまく段丘崖に沿って帯のように奈良岳・医王山へ広がっている。

緑の回廊・小立野台地の遠景
(金沢市寺町1丁目、下菊橋付近より、2003年8月6日撮影)

 犀川、浅野川の左岸、右岸を河川敷などから遠望すると、スダジイ・タブノキからなる常緑広葉樹林、モミ・スギ・アカマツなどの温帯針葉樹林、モウソウチクの竹林、ケヤキ、ミズキなどの冷温帯落葉広葉樹林、アカメガシワ、カラスザンショウなどの暖温帯先駆性植物群落、クズ、アオツヅラフジなどの林縁性低木・つる植物群落などの多様な相観がみられる。
 これらは市街地の緑と山地・丘陵とを結ぶ動植物の回廊、「緑の回廊」として重要な役割を演じている
(文献34)

ススキ、ヨモギなどの草本、ヤブガラシなどのつる植物、アカメガシワ、クサギなどの先駆性木本が混成する斜面
(金沢市三口新町、2004年8月10日撮影)

 河岸段丘ではある程度崩壊が規則的に起きる。
 「緑の回廊」ではこの斜面崩壊という地表の撹乱を成立要因として遷移していく様々な植生が展開している
(文献34)

 崩壊後の崖斜面にはまず自然裸地が生じ、やや安定したところではススキなどの高茎草原がみられる。

クズが優占する崖斜面
(金沢市西大桑町、2004年8月10日撮影)

 崩壊後間もない崖斜面などにはクズ、アオツヅラフジなどの林縁性低木・つる植物群落もみられる。

アカメガシワ、クサギなどからなる先駆性植物群落
(金沢市三口新町、2004年8月10日撮影)

 崩壊跡地や林縁、老樹が倒れたあとにギャップが生じて光が差し込んだところにはアカメガシワ、カラスザンショウなどの暖温帯先駆性植物群落などがみられる。

崖斜面のケヤキ林
(金沢市天神町、2004年8月10日撮影)
 

 また、崖斜面では、地表変動によって遷移の途上で足ぶみ状態にある持続群落的なケヤキ林(持続性ケヤキ林、ヤブツバキーケヤキ群落)もみられる。

スダジイ、タブノキなどの常緑広葉樹が優占する「本多の森」
(2003年5月4日撮影)

 最も安定しているところにはスダジイ群落、タブノキ群落などの常緑広葉樹林がみられる。

 小立野台地の末端部にあたる本多の森では成熟した常緑広葉樹林がみられる。
 
 その後、再び崩壊が起こることによって植生の遷移が繰り返され、植生の周期的な帯状配列が形成されていく
(以上、文献26、34など)
 「緑の回廊」はこうした地表変動が著しいので建物などがつくられずに維持・更新されてきたものと考えられる
(文献34)

本多の森のスダジイの巨木
(2003年5月4日撮影)

 金沢は城下町として発達してきた町であり、市街地の植生も古くから人為の影響を受けてきたものと思われるが、17世紀中頃の金沢の様子を描いた「金沢図」(石川県立図書館蔵)を見ると(文献42)、小立野台地の両側に細い帯状の緑が描かれている。
 この帯状の緑は、犀川側では現在の本多の森付近、浅野川側では国立金沢病院の裏手までつながっている様子が読み取れ、「緑の回廊」が古くから維持されてきたものであることが推察できる。

 

 ■引用文献一覧