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海岸の植生

 石川県の海岸線は延長約570kmに及ぶ。南半部の約85kmは単調な砂丘海岸であり、北半部の能登半島は変化に富んだ岩石海岸と小さな砂浜が交互に繰り返されている(文献26)

健民海浜公園の砂丘
(金沢市普正寺町、2003年9月26日撮影)

 石川県の南半部の海岸には内灘砂丘をはじめとする全国有数の規模を持つ砂丘がある(文献26)
 打木(うつぎ)から粟ヶ崎までの金沢市の海岸線にもこうした砂丘地が広がっている。

 海岸の砂丘は、河川の上流から運ばれた砂が再び海岸に打ち上げられ、さらに海風によって内陸に運ばれてできたものである。
 砂丘は、砂の保水性の悪さや有機物の含有量の少なさ、風によって砂が持ち去られたり(禿砂・とくしゃ)、砂が堆積するなどの砂の移動など、植物の生育にとっては決して十分な環境ではない
(文献62)

茎が地表を長く匍匐するハマベノギク
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 多くの砂丘植物は、地下茎によって砂丘の中へ侵入して広がる。

砂丘の上に単生しているハマニガナ
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 種子によって広がる植物は、数個体が集まって生え、やがて間引かれる。ハマゴウやハマニガナなどがその例である(文献62)

海岸の植生配列の例
 海側(写真手前)にはハマゴウ群落、ススキやチガヤなどの草地、内陸(写真奥)にはニセアカシア低木林、クロマツ林が広がっている。
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 「絶えず動く砂」という植物にとっては大変厳しい環境であるが、それに適応できた砂丘植物が、波打ち際から内陸に向って、立地条件の変化に従い、規則的な植生配列を見せている(文献6)

砂の移動が激しい砂丘地
ハマニガナ、ウンランなどが点在
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 砂の移動が最も激しい場所を不安定帯という。激しい砂の移動により、植物は埋もれたり、根が露出したりする環境である(文献62)

 それでも砂の堆積に対しては、地下茎を上に伸ばして砂の上に茎を出したり、オニシバのように地下茎を下に伸ばしたり、ハマゴウ・ハマボウフウのように直根を地中深く伸ばしたりして、砂の移動に耐えて生育する植物がある(文献62)
 このほか、不安定帯に群落を作る植物には、ハマニガナ・ハマヒルガオ・コウボウムギ・ハマニンニクなどがある
(文献62)

海岸のクロマツ植林の林縁のハマゴウ群落
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 一方、砂がほとんど移動しない場所を安定帯という。地形的に風力が弱まったり、植物が地表を覆っていて砂の移動が抑えられたところである。

防風、砂防目的で植栽されたニセアカシア林
ニセアカシアは肥料分の少ない土地でもよく生育し、また土砂の移動に対しても強い(文献26)
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 ニセアカシアやクロマツなどの植林によってこうした立地が人為的に作られることもある(文献62、海岸林については、いずれ別項として追加更新する予定である。)

砂丘の後背地のケカモノハシやチガヤなどの群落
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 不安定帯と安定帯の中間を半安定帯という。ここは禿砂(とくしゃ)と堆砂がほぼ同じか、やや堆砂の少ないところで、オニシバ・ケカモノハシ・ウンラン・ビロウドテンツキ・カワラヨモギなどが優占する(文献62)

ハマベノギク(手前)とケカモノハシ群落
(健民海浜公園、2003年9月26日撮影)

 これらの不安定帯、半安定帯はモザイク状で、内陸部でも地形によっては不安定帯が作られることがある(文献62)

健民海浜公園の海岸線
右端に護岸工が見える。
(2003年9月26日撮影)

 内灘砂丘をはじめとするいくつかの砂丘地が発達する加賀海岸は、かっては砂丘植物群落の宝庫であったという(文献26)

 しかし、近年は、海岸浸食とそれに対抗するための工作物の設置、道路建設、観光施設の開発、ゴミの投棄など様々の人為的作用による破壊が大きく、身近な自然植生の代表である砂丘植生は著しく失われた(文献26)

 

 ■引用文献一覧

 

   


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